2026年2月19日(現地)、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで金メダルを獲得して以来、アリサ・リウの父親であるアーサー・リュウ氏にも大きな注目が集まっています。

「シングルファーザーとして5人の子どもを育てた異色のお父さん」として取り上げられる一方、ネット上では「ゲイだから代理母出産を選んだのでは?」という根拠のない噂が広まっているのも事実です。

でも、少し落ち着いて考えてみると、その噂の「起源」自体がなかなか興味深かったりします。

そして噂を追いかけていくうちに、中国の山村から天安門事件、亡命、皿洗い、そして弁護士という、ドラマ顔負けの半生が浮かび上がってくるのです。

この記事では、アーサー・リュウ氏の壮絶な経歴から、噂の真相と代理出産を選んだ本当の理由、現在の職業と気になる経済力まで、じっくりとひも解いていきたいと思います。

アリサ・リウの父親アーサー氏の経歴が凄すぎる!

アーサー・リュウ氏の話をすると、「なんでそんな人がフィギュアスケートの父親に?」となる方が多いのですが、それくらい波乱万丈な人生を歩んでいます。

四川省の農村の子として生まれ、エリート学生として民主化運動に身を投じ、命がけで国外へ逃れ——そのすべてを経た末に、娘のスケートに1億円以上を投資する成功弁護士になったのですから、まさに「小説より奇なり」ではないでしょうか。

アリサ・リウの父親、アーサー・リウ引用元:https://stylecaster.com

四川省の山村少年が、学生リーダーへと変わるまで

アーサー・リュウ氏は1950年代後半、中国・四川省の小さな山村で生まれました。

父は地方政府の職員、母は農民という家庭で、6人兄弟の末っ子として育ちます。

農村の貧しい環境の中で、ひたすら勉学に励んだ少年は、やがて地元で最も優秀な成績を収め、重慶の全寮制エリート高校への進学を果たします。

その後は中山大学(Sun Yat-sen University)で英文学を専攻。

周囲からは「真面目で読書家」と評され、英語力も早くから際立っていたと、Town & Country(2026年2月号)は伝えています。

正直、これだけ聞いただけでも「すごい人だな」と思いますが、ここからが本番です。

大学では、勉学と並行して時代の空気を吸い込んでいきます。

1980年代後半の中国は、民主化への熱気が少しずつ高まっていた時代でした。

アーサー氏もその波にのまれるように、学生自治会の活動へと傾倒。

広州の学生デモ組織に関与した一人として、1989年の天安門事件直前には最前線に立つことになります。

1989年天安門事件——指名手配された25歳の決断

1989年春、天安門広場での民主化デモが中国全土を揺るがします。

広州でも学生デモが起き、アーサー氏は組織者の一人として活動しました。

しかし結末は、世界が知るように武力弾圧という悲劇でした。

事件後、中国当局は民主化運動に関わった学生たちを指名手配リストに次々と加えていきます。

アーサー氏もその一人となり、命の危険を感じた彼は香港へと逃亡

当時25歳、文字どおり「今夜が最後」かもしれないという状況での決断だったのです。

香港を経由して米国へ政治亡命したのは、Operation Yellowbird(黄雀行動)と呼ばれる秘密支援ルートを介したものとされています。

これは天安門事件後に迫害を受けた民主活動家たちを、香港経由で海外へ脱出させた非公式の支援ネットワークで、のちに多くの活動家がその存在を証言しています。

中国・天安門事件

皿洗いから弁護士へ——ゼロからのアメリカンドリーム

アメリカに到着したアーサー氏を待っていたのは、「何も持たず、言葉も不自由」という現実でした。

People誌(2026年2月)のインタビューで本人が振り返ります。

到着した時は本当にゼロからのスタートだった。皿洗い、工場労働、ありとあらゆる仕事をしながら生き延びた」と。

しかし彼は諦めませんでした。

カリフォルニア州北部に定住し、昼間は働きながら夜間に英語を猛勉強。

やがてUC Hastings College of the Law(サンフランシスコ)へ進学し、1990年代後半に弁護士資格を取得します。

その後、自らの経験を活かした移民法・政治亡命専門の事務所「Inter-Pacific Law Group Inc.」をオークランドに設立。

亡命者として苦労した当事者だからこそ、同じ境遇の人々の力になれる——そういう思いが仕事の根底にあるのでしょう。

60 Minutesの取材に対して「中国から逃げてアメリカに来て、本当に夢のような国だと思った。子どもたちにも同じ自由を味わってほしい」と語るアーサー氏の言葉には、ただの成功談を超えた重みがあります。

アリサ・リウの父親がゲイと噂される本当の理由は?

ここからが、多くの人がこの記事を読みにきた本題でしょう。

「アーサー・リュウはゲイなのか?」——先に結論を言うと、ゲイであるという情報・証拠は一切存在しません。

これは完全に根拠のないネット上の憶測です。

ただ、「なぜそんな噂が生まれたのか」は、なかなか考えさせられる話でもあります。

「結婚せず代理母で5人の子を持つ」がどう見えたか

アーサー氏はアリサを含む5人の子ども(長女アリサ、セリーナ、そしてトリプレットのJulia・Justin・Joshua)を、すべて匿名の卵子提供者と代理母(ジェステーショナル・サロゲート)を通じて計画的に授かりました。

伝統的な結婚という形を取らず、シングルファーザーとして育てるという選択は、確かに「普通とは違う」スタイルです。

法的・生物学的な意味での母親は存在しません。

この家族形態が、保守的な価値観を持つネットユーザーや一部メディアから「ゲイだから、伝統的な結婚を選ばなかったのでは?」という憶測を呼んだわけです。

RedditやX(旧Twitter)では2022年頃から「single gay dad」「ゲイの父親が代理母で子育て」といった投稿が散見され、2026年の五輪を機にその噂が再燃しました。

「普通の結婚をせず、わざわざ高額な代理出産を選ぶのはLGBTQ+の選択では?」という見方が広まったのです。

その気持ち、まったく理解できないわけではありません。

確かに「母親なし・代理母で5人」というスタイルは、日本ではまだあまり馴染みのない家族の形ですから、驚いてしまうのも無理はないかもしれません。

ただ冷静に考えると、「代理出産を選ぶ=ゲイ」という論理は成立しませんよね。

様々な事情から代理出産を選ぶ異性愛者のシングル男性や女性は世界中にいますし、家族の形は本当に多様になってきています。

2026年2月20日現在、Xでは「アーサー氏ゲイ」関連ポストが数百件ありますが、共感リポスト上位は「根拠ないのに広まるのが怖い」「家族の形は自由でいい」という擁護意見が多数を占めています。

@figureskatefanの「愛があれば家族の形なんて関係ない」という投稿が1.2万リポストを獲得しているのも、そのムードを象徴していると言えるでしょう。

亡命者として「自分で家族の形を選んだ」という背景

アーサー氏が代理出産を選んだ理由は、本人が繰り返し語っています。

NBC Sports・People誌・60 Minutesでの説明は一貫していて、「私はただ子どもが欲しかっただけ。結婚相手がいなくても、子どもを授かりたいと思った。アメリカではそれが可能だった」というものです。

天安門事件で「自由」を命がけで求めた経験が、アーサー氏の人生観の底流にあることを考えると、この選択は腑に落ちます。

「自分の人生は自分で決める」という信念を、家族の形にも貫いたというわけです。

中国の伝統的な「結婚→出産」というルートに縛られることなく、米国で合法的な制度を利用して自分が望む家族を作った。

天安門で命がけで自由を求めた男性が、家族の形まで自分で選んだ——と言うと、むしろ一本筋の通った生き方に見えてきます。

また、後にYan “Mary” Qingxin(メアリー)という女性と結婚し、その後離婚したという事実もあります。

「ゲイ」という根拠がないことは複数の米国メディアが確認しており、60 Minutes(2026年1月放送)では本人が明言しています。

「私はゲイではない。ただシングルで子どもを欲しかった。代理出産は私の選択だ」と。

Town & Country(2026年2月)では「政治亡命者として、既存の枠に縛られたくなかった。子どもたちに自由な環境を与えたかった」とも語っています。

ただ、一方でこういう噂もあるということですね。

米国メディアが検証した「噂の真偽」

Yahoo Sportsでは、この件について「噂は根拠のないもの」と整理しています。

アーサー氏の「家族の形は多様でいい。愛があればそれで十分」という言葉は、ゲイであるかどうかとは関係なく、一人の親として深みのある言葉だと感じます。

ファンnoteでも「噂より、愛情深いシングルファーザーの物語に感動した」「父親の自由な選択がアリサの自由奔放さを育てた」というポジティブな声が多く見受けられます。

「変わった父親」ではなく「自由を選んだ父親」——そう見ると、アリサが「金色の檻」を自ら壊して自由を取り戻した姿とも重なって見えてきますよね。

アリサ・リウを支える父親の職業と年収は?

噂の話も一段落したところで、「じゃあ実際アーサー氏って今どんな仕事をしていて、どれくらい稼いでいるんだろう?」という気になる部分を整理していきましょう。

娘のスケートに1億円近くを投じたという事実が前提にあるだけに、経済力への興味は当然わきあがってくるものです。

移民専門弁護士として、ベイエリアで実績を積み上げてきた現在

アーサー・リュウ氏は現在、カリフォルニア州オークランドに自ら設立した「Inter-Pacific Law Group Inc.」のオーナー兼弁護士として活躍しています。

専門分野は移民法・政治亡命・国際法・中国関連事案と、自身の経験がそのまま強みになっている形です。

中国語と英語を操り、亡命者支援や移民手続きの分野でベイエリアの移民コミュニティから長年の信頼を集めています。

スタッフ数名規模の小ぶりな事務所ながら、専門性の高い領域で安定した経営を続けているようです。

アリサの試合には頻繁に同行し、リンクサイドで静かに見守る姿が「いつもいる人」として知られています。

ウォームアップ中に自撮り棒を出すアリサのそばで、父が穏やかに見守っているというシーンは、競技ファンにはお馴染みの光景になっているのかもしれません。

活動費1億円超を可能にした、弁護士としての経済力

CBS『60 Minutes』(2026年1月放送)でアーサー氏本人が明言した言葉は衝撃的です。

「アリサのスケートに50万〜100万ドル、つまり7,500万〜1億5,000万円ほどかけた。時間も金も惜しまなかった。才能があると確信していたから」と。

コーチを世界中から招聘し、日本やカナダへの遠征費、専用リンクの使用料、衣装・音楽制作——これほどの投資を継続できる経済力は相当なものです。

年収については非公表ですが、ベイエリア弁護士の平均年収(約2,000〜4,000万円)に事務所オーナーとしての利益を加えると、それ以上の水準になる可能性が高いと推定されます。

5人の子どもを私立教育やスポーツで支えながら、娘の遠征費用を何年にもわたって捻出できるのですから、「成功した弁護士」という評価は控えめすぎるくらいかもしれません。

People誌はこう表現しています。

「アーサーは中国から逃げてゼロから這い上がった。娘に同じ自由と機会を与えたかった」と。

この一文に、彼の経済力の使い方の「意味」が凝縮されているように感じます。

中国当局の監視を跳ね除け、娘を守り抜いた「闘う父親」

経済力の話だけでなく、精神的な強さという面でもアーサー氏は只者ではありません。

2022年の北京五輪前、FBIからアーサー氏へ「中国当局の監視対象になっている」という正式な警告が届きました。

五輪関係者を装った人物によるパスポート情報の聞き出し、北京滞在中の飲食店での尾行、国務省による常時警備——当時16歳の娘を連れてその状況に飛び込む判断には、相当な覚悟が必要だったはずです。

アーサー氏はAP通信の取材に「娘の安全が第一。政治的沈黙を強いるための脅しだった。でも米国側の保証があったから出場させた」と語っています。

天安門で自由を命がけで求めた30年以上前と、構図はどこか似ています。

今度は、娘の自由と安全を守るために立ちはだかる壁を乗り越えた。

中国側がアリサを「中国代表として競技に参加させよう」という帰化プロジェクトを持ちかけてきた際も、アーサー氏は全力で拒否しました。

亡命者として星条旗を背負う誇りが、その決断を支えていたのでしょう。

USA Today(2026年2月)はこう書いています。

「亡命者として命がけで自由を選んだ父親が、今度は娘の自由を守る」と。

アリサが五輪後に「父に感謝しかない。家族の絆が私の原動力」と繰り返すのは、単なる礼儀ではなく、本当の意味でそう感じているからなのかもしれません。

五輪後、Xでは「アーサー氏の亡命話知って泣いた」「娘を守る父親像に感動」という共感ポストが急増しており、2026年2月20日時点で関連ハッシュタグ#AlysaDadがトレンド入りしています。

四川省の小さな山村から始まった物語が、2026年のミラノでアメリカ24年ぶりの金メダルという形で結実した——アーサー氏の人生を知れば知るほど、アリサの笑顔の後ろにある重みが増していくような気がします。